富良野で農家る! 桃子のローカル日報
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冬空もよう
北海道、ひとつといえども場所によって気候も天気もちがうもので
地形と空気の流れとの関係が、視覚的にも体感的にもリアルに感じられます。
西の方から中国大陸をわたり、日本海の湿気を含んで流れ込んできた空気が、
北海道の東側の山々にブレーキをかけられるので、その夕張山地よりも西側が豪雪地帯となります。
それが、空知地方です。かつて炭坑で栄えた街が連なっています。

ちょうど東北地方でいえば、秋田や山形の位置に似ているので
風の通り道からすると、その空知地方に、雪が多く降るのです。
そして、こちらの雪は湿っているので重たくボリュームがあって、あらゆるものに付きやすい性質をもっており
建物やビニールハウスの骨、はたまた電線など、雪が海老フライの衣のようにまとわりついて
何でもかんでも重たくしてしまいます。

ですから、雪国では屋根の勾配をきつく作って雪を載せないようにしたり、
屋根から雪が落ちてくる危険に気をつけなければならなかったり、
落ちた雪で近隣の家々に迷惑がかからないようにと配慮したり、
そこで生きる為には、じっとそこで警戒しながら身を守るということが、
暮らしのなかでおおきなウェイトを占めてきます。

それにしても、ちらっとTVで見ただけではありますが、このところの雪の多さは桁が違うようです。

さいわい、今日は心地よい晴れでしたので、少し高いところに上がって遠くに眼をやれば、
そちらのほうにあまり雲が無い、ということが瞬時にはっきりとわかります。
わざわざお天気予報の番組が始まるのを待ったり、気象衛星からの画像を検索しなくてもよいのです。
その方面にお住まいの方々は、少しは心が落ち着いていらっしゃるのでは、と思います。
世界では、水害のニュースがたびたび聴かれるようになりましたけれども、
これもまた、ひとつの水害であるなと感じました。

ちなみに、我が家のプリンターの調子が悪くなったので、修理に出したところ
タイの水害で部品が供給できなくなったとのことで、そっくりそのまま別のものと交換されてしまいました。
新品と交換されたのですから、ストレートに喜べばよいのかも解りませんが、
遠い地から、たくさんの人々の恩恵を受けて成り立っている、
私共の暮らしとのつながりを、心の痛みや、もどかしさとともに実感する日々です。

かわって、先ほどの空知地方・夕張山地の東側にあるのが、富良野盆地です。
空知地方で湿気を抜かれた雪が、寒気とともに胡椒を振るようにして落ちてきます。
そして、降ったあと、さらに雪の水分が空中に舞い上がり、微細な氷となって昇華するので
さらにさらさらした雪になります。
握っても固まらない、グラニュー糖か砂のような雪です。
この雪のつもり方は、空知地方のようなボリュームがありません。
そのかわりに、風でよく飛ぶので、晴れていてもところにより吹きだまりが出来てしまいます。
光の加減や、斜めに降る吹雪のいたずらで、この微妙な吹きだまりの凹凸がわからないことがあり、
この微細なモノトーンを感じるのを怠ると、車をこの小さな砂漠に嵌めてしまうことがあります。

まさに、その微妙な質感や、生命を守ろうとする本能のような感覚が、
だいぶ養われてきたように思います。
富良野に来て7回目の冬、暮らしや未来への不安だった要素が、
こういった力強い感覚に入れ替わっていくのが、ひそかに嬉しいものです。

かつて東京で、浅草勤めになったのに、隅田川の川のふちまで歩いて行っても
花火がひとかけらも見えなかった空しさが、思い出されます。
門前払いを喰らったような孤独と、せせこましく高いビルの壁。
夜があけて、道路に残る場所取りのガムテープのラインや名前、ぶっきらぼうにびらびらと熱風にゆれる
その茶褐色の縄張りのあとをみて、つくづく嫌になったものでした。
東京のど真ん中で生まれたはずの私であっても、つまるところ、おのぼりさんなのです。

さて、どうせのぼるのならば、とびきりでっかい山の方が気分が良いものです。
私は今日も十勝岳連邦の山にのぼり、特上の乾いた雪の上を飛ぶように滑り落ちて来ました。
灰にまみれたような記憶が、一気に過去のほうへと飛ばされるとき。
過去の経験や得られたものは、普段はどこかに隠れているけれども、
ひょんなきっかけで、いもづる式に引きずりだされることがあります。

時に、これらの整理は必要なもので、もともとそう容量のない頭と懐に
無理なく納めておけるよう、こうした機会を大切にしなければ、と
ここのところ、より強く思うようになりました。
過剰につもった知識と感情は、精神状態や、体のあちこちを締め付けたり詰まらせたりして、
日常生活のなかで的確な判断をしたり、思考にあっても行動においても、取りうる道筋の数を限ってしまいます。

せっかく、この富良野に住まわせて戴いていますので、
このおおいなる恵みを大切に、そして精一杯味わいたいと考えています。




posted by momouyda | 19:15 | 雑記帳 | comments(0) | trackbacks(0) |
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