富良野で農家る! 桃子のローカル日報
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土を学ぶ
2月に入り、「第13回 ふらの土の会」が開かれました。

「ふらの土の会」とは、毎年この時期に、東京農大より後藤逸男教授をお招きして、
土壌学の集中講義を受け、会員ひとりひとりの畑の土壌の状態と、適切な肥料の使い方について学ぶ会です。
現在、こうした「土の会」は全国で20支所を数え、会員数600名にのぼります。
秋のはじめに、農大研究員をはじめとしたチームが各畑を回って、試験土壌と畑のデータを集めます。
そのサンプルの分析結果が、グラフと数値、肥料の処方をひとまとめにした資料となって帰ってきます。
その資料を、皆でみながら肥料の選び方や、土に入れる時期、肥料同士の相性、コスト、生育状況など、
実際に肥料を扱っている生産者ひとりひとりの生の話を交えながら、
その畑にとって適切な土壌の作り方を、個別にたくさんの面から検討し合う会です。

畑の通信簿でもある土壌の分析結果は、農村であるなしを問わずありがちな、
恥をきらって隠したくなるような個人データです。
しかし私共も、先輩諸氏も、いく度か参加してしまえば何ということもなく、
いつのまにか出てきたデータに対して冷静になってきています。
そして、適切で成分的にも、労力の面などからも効率の良い計画を実行することにより
生産コストが随分と抑えられることに、まず頑固な親方達が気づき、すでに実行されています。

この会が13回を重ねていると、土壌成分的に、理想値に近い数値ばかりが並ぶようになってきて、
今やなんと、つつき合うのに必要な重箱の隅がなくなってきてしまいました。
そうして今、親方世代が交代してきて、アラフォーの若い親方が熱心に肥料の扱いについて学びつつあるところです。

こうした、有り難い機会をメロンの親方蓮中が育み、ふらのに定着させて下さっています。
そうしたところに新米の私どもが正式に参加して今年で4回目になり、
教授の講義や、先輩の事例を検討する会話にもついて行けるようになりました。

私自身は比較的冬にも時間のあった、最初の2年くらいで土壌学のテキストを読みこんで、
用語辞典を見つつも、あとは会で発行されるテキストに従って流れをつかんでしまったら、
物理化学の知識がなくても、また数学が全く出来ない私であっても、大体のことは理解できるようになってきています。
そして理解が進むたびに、専門家の話を伺うことが、さらに面白くなってきました。

土壌学とはいえ、結局は土壌というだけにあらゆるものの根源的な問題を背負っていて、
社会経済や生活文化、環境問題、それを取り巻く人間の心理まで多様な要素が含まれてくるもので、
論議の種はまったくの無限であるなと思います。
そして深刻すぎる現状のほかにも、知られてはいないけれども実は随分と存在する
希望の種があることも知りました。

今回、最初に行われた講義のなかでは、土の会の全国での活動ぶり、
そして昨年は後藤教授が福島の被災地におもむき、津波による塩害と、放射性物質の除染にかかわり、
毎月現地に足を運んで、ここ数ヶ月のあいだその方法を探ってこられた様子を伺いました。

津波による塩害については、海水中に含まれる成分は、植物にとって有害なものばかりではなく、
めったに供給されないはずの貴重な成分や、状態の良い海底の泥なども運ばれてきているので、
適切な処理を重ねてゆくことにより、すでに緑が戻っている土地も少なくないそうです。
やがて、作物を作付けできる見込みが立ってきている土地も多いとのこと。
雨の多い日本ならではの浄化作用が働いています。

なにより、ところによっては被害にあった畑に手を付けることに対して、行政のブレーキがかかっているけれども、
時が経つにつれて雑草の種は容赦なく発芽して、その子孫を何万倍にも殖やしてしまうものだから、
被災農家の焦りはただ事ではないようです。
嘆きにくれるか、行政の動きを待たずに自己責任で行動するか、判断を迫られているのが実情だそうです。

その土地を守るということの親方が背負っている責任感について、私どもが慮ることはできません。
福島第一原発にほど近いところにある業者の女性社長氏も同席されており、
明るく話をされる教授の姿に、重くて複雑な思いを抱くのでした。

一方で、ふらの土の会でよく使われるようになっている肥料がいくつかあります。
なかでもおもにミネラルを補う肥料については、自然界の鉱石を精錬したあとの残りが、
粉にして肥料とすれば、そのままで多様な成分を含み、作物にとって良い配合でありながら、
まだ利用が進んでいない現状についてのお話がありました。

その鉄の搾りかすのことを、「転炉スラグ」と呼びます。
通常、転炉スラグに含まれているカルシウム分や、リンなどは、単品での鉱石から用いられることが多く、
しかもリン鉱石についてはすべて輸入に頼っています。

それが、国内で作られる製鉄のカスが、輸入量をまかなえるくらいのリンを含む
という試算が成り立つのではないかという予測のもと、研究が進められているそうです。

ほかには、最近韓国で、ハクサイが不作になりキムチが作れず中国から輸入した、という現状にちなんで
現地から講義を頼まれ、後藤教授が韓国に赴いたというご報告がありました。
韓国のハクサイ畑は、まるで美瑛のような丘陵地が全部ハクサイ、というすさまじい光景に
会場が沸きました。
そして、それがさらにげんこつサイズの石がざくざくとしているような土地であることに驚かかされました。
そのような畑に耕作機械の出る幕はないのですが、その砂利が重石になるおかげで、
雨で土が流れてしまう作用が抑えられてもいます。

ほかにも、肥料で起こった事故についての対策や、富良野で開発された肥料の使い方について等が話題に上り
内容の濃い勉強会となりました。
これからの課題は、さらに耕畜連携にスポットをあて、より多くの畜産農家のご参加と協力を願って
現場の声を伺いながら堆肥に含まれる成分を明確にし、肥料成分とだぶってしまう作用を抑えていくことに注目したい、
とのお話で会が締めくくられました。

年に一度、ほかの地域や自身の専門作物の先輩と顔を合わせる意味からも、
「ふらの土の会」は意義のふかい集いであると感じています。
そして、会の進行を勤める吉田博士、福田研究員は、女友達としても付き合ってくださり、
私にとってこころ強く、楽しいものです。

地域の生産者、品目による世界の違い、あるいは業者といったさまざまな社会的な囲いや立場を超えて
意欲のあるお仲間が集い、学び合っているこの機会に参加させていただいていることに、
幹事や関係者の皆様に深くお礼を申し上げます。
posted by momouyda | 23:24 | 雑記帳 | comments(0) | trackbacks(0) |
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